中飛車研究所(将棋)掲示板
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叡王戦、菅井vs佐藤天戦を見ていきましょう。 「振り穴王子」は、かつて広瀬八段の代名詞。深浦九段を破って王位となった辺りまで、彼は文字通りのスペシャリストだったんです。「振り飛車穴熊の最終進化」などという本も出ていました。坊やばかり注目されていますが、八段の終盤力も相当で、これが緻密な速度計算が要求される穴熊の終盤戦に存分に生かされていたんですね。それで、広瀬王子に敬意を表して、二世の話に戻ります。 ヘボは能天気なので「何とかなるんじゃね?」のノリで振り飛車の可能性を信じております。そればかりか「将棋の本質は後手有利では?」とも思っております。根拠は大名人の実績です。しかしながら、実際に現場で生活懸けて戦っている人の認識では、「希望が無い訳ではないが、現状はやや厳しい」(by久保他)ということです。私は菅井君にもっと自由奔放に、あの永世七冠を翻弄した王位戦のように指し回して欲しいと願っているのですが、実戦的に勝ち易い穴熊を多用している現状は、そういった背景を裏付けているのでは、とも感じています。 さて、実戦は珍しく先手四間飛車になりました。先の順位戦も踏まえての選択ですかね。序盤で「相手の思い通りにはさせない」と早くも火花が散ります。▲5六銀に▽5五歩。▲4五銀は無理と見て▲6七銀と引き下がりました。居飛車は早い動きは無いとみて居飛穴を明示。しかし用心深く振り飛車の角道が▲6六銀と止まったことを確認してからの入城です。 互いの玉が穴熊に収まった時点での形勢は微妙ですが、玉がやや薄く、金銀が上ずっているので振り飛車不満?持久戦になってはダメということで、▲4五歩から中飛車に振り直して手を作って(例えば手筋?の▲5四歩の垂らしなど)いきます。この辺りは天才的で「振り穴を知り尽くしている」感がありますが、自分の土俵に引き込むことの大切さを痛感します。 一方、天彦九段も受けの強さは有名で、振り飛車の角交換から続く強打にも倒れず踏み止まります。しかし、途中▽7四角から振り飛車の馬を消しにいった手が(私には)当然に見えて悪かったようで、結果的に燻っていた敵飛の捌きを許してしまいました。 そうなると最終手段は端攻め。文字通り双方の玉頭になるので、一手の間違いで即転落。菅井君はその辺りのアヤを的確に処理し、勝勢に持ち込みました。色々な意味での見切りの正確さ、言葉を変えれば決断の良さが光った将棋でした。 番勝負で坊やを倒せるのは菅井君しかいません。なぜなら居飛車党は坊やの得意分野で勝負を挑んでいるから。棋界の流れを変えるべく頑張って欲しい。しかし、その一方でその前にパラマスを抜けないといけない順位戦も控えている訳ですが。大変ですけど、棋士冥利に尽きるのでは。
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